星野史雄氏星野史雄氏(闘病記専門書店「パラメディカ」店主)

 オンライン古書店「パラメディカ」の役割は、ひたすら闘病記を集めてデータベースを作ること。“自分の闘病体験に社会的な意味を持たせたい”と考える著者と、“少しでも自分の病気に関する知識を得たい”という読者とを繋ぐことではないかと考えています。

 従来、闘病記は公共図書館でも医学図書館でも体系的に収集されてきませんでした。患者自身の声をもっと生かすために、病名から闘病記を検索できる場所を作りたいというのがパラメディカ開店の意図でした。もちろん全ての病について闘病記が書かれている訳ではありません。が、その間隙を補うものとして個人の闘病体験を公開する“闘病記サイト”が存在し、インターネット人口の裾野が広がった平成12、13年ごろから増加しています。

 最近、福岡からパラメディカにこんな携帯メールが届きました:
「はじめまして。私の次男が一歳のときに“肝芽腫”を発症、三歳で再発し、今二回目の移植を終えたところです。あまりいい結果ではないようで、これから腫瘍マーカーが上がっても、これといった治療法がないようです…。」

「“肝芽腫”に関する情報が欲しい」ということなのですが、残念ながら闘病記は見つかりません。そこで、ネット検索すると“肝芽腫の会”というサイトを見つけました。神奈川の小児病院で出会った、同じ病を抱えるお子さんを持つ三人の親たちが立ち上げたサイトで、自分たちの闘病体験から小児がんの基礎知識、主治医の先生のエッセイまで盛り込んであります。

 この情報と小児がんに関する専門書について上述の方にお伝えしたのですが、「パソコンを持っていない」との返事。困っていると、「その日、まだ(病院に)残っておられた主治医の先生に声を掛けたところ、翌日、先生が“肝芽腫の会”のホームページを打ち出してくれたのです。早速、会に連絡を取り入会しました。」とのメールが届きました。同会メンバーの方からも丁寧な連絡があり、サイトをより充実させたいという意気込みを語っておられました。

 患者数が百万人に一人以下、日本では全国で年間二十から四十人という患者数の肝芽腫にも、こうしたネット上のミニ患者会が出来ています。「IT革命」などという勇ましい掛け声とは別の場所で、その技術を駆使して静かにささやかにしかし確実に、貴重な情報が集められて公開されているのです。
 パラメディカでは約230種類の疾患別に1300タイトルの闘病記をリストアップしていますが、個人の闘病記サイトもこまめに閲覧し、内容を確認の上リンク集に入れています。本の闘病記と同様、こちらも膨大な情報の山に埋もれがちな存在ですから。

(本書ページ18)

閉じる

QLOOKアクセス解析 QLOOKアクセス解析