埴岡健一氏 埴岡健一氏(「インターネットを使ってガンと闘おう」著者)

 ニューヨークに住んでいたとき妻が白血病となり、本当にうろたえた。何せ、白血病がガンの一種であることさえ知らなかった。そんなとき、インターネット上の患者会には、ずいぶんとお世話になった。

 まず、Bone Marrow Talk(骨髄移植談話室)。英語での世界のパソコン通信上のフォーラムだ。最初はただ、患者さん(家族)同士のやりとりを眺めていた。治療がうまく行かない悩み、病院選択の迷い、そして治療がうまく行って退院した人の話・・・。我が家の闘病がどうなるのかというイメージ作りに役立った。

 つたない英語で思い切って質問もしてみた。「シアトルの病院に転院したいのだが、アパートはありますか。ボランティアに助けてもらえますか」。すると「私は○○アパートに住んでいた」「私は××ホテルに泊まった」などと返事が来た。見知らぬ人が助けてくれる。嬉しかった。

 それから「らくだのオアシス」というパソコン通信フォーラムを見つけた。やはり日本語は落ち着く。病気に疲れた妻は、特に自分と似た病状の患者さんの書き込みを食い入るように読んだ。私は、妻の闘病を日記風につづってアップした。たくさんの励ましをもらって、それをプリントアウトしては、妻に見せた・・・。

 あんなに頑張ったのに、妻は遠くに旅立ってしまい、もう7年が経った。見知らぬ患者さんにいろいろと教わったから、ささやかながらお返しをしたくなった。妻が生前「治ったら、人のためになることをしたい」と言っていたこともある。

 まず、闘病記をホームページに載せた。作業をしてくれたのは、闘病中の患者さんだった。また、英語の素晴らしい解説書がたくさんあるので、それをボランティア仲間で翻訳してホームページに掲載した。病気の説明や病気とどう向き合うかなどの内容だ。そして、「白血病談話室」というメーリングリストも作った。患者さん700人、医師100人が参加している。患者さんが医療面、生活面、両方の悩みを相談できる場にしようという趣旨だ。

 ここ数年でインターネットは見違えるほど発達して、ネット上で患者を助けてくれる場所もたくさんできた。リンクをたどり疾病に関する基礎知識を集め、メーリングリストに入って質問をする。そして、講演会があれば出かけ、著名な医師の話を聞き、質問し、個別医療相談をしてもらう。今はこうした会が続々とできているから、気軽に参加してみればいい。

 治療は日進月歩で医師の質も千差万別、得意技もかなり違う。いろいろ聞いて調べて転院した人もたくさんいる。患者同士の情報交換で新しい治療法を見つけることも、闘病の苦労が大きく軽減されることも、気持ちがずいぶん楽になることもある。

 「聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥」と言うが、大病をしたときは、「聞かぬは命の問題」になりかねない。闘病に遠慮は損ですぞ。くれぐれもご記憶あらんことを。

(本書ページ12)

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